音楽ライター黒崎正刀による、ヘヴィメタル、激烈メタル、ハードコア、パンク、オルタナティヴ他などの批評ブログ
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AT THE GATES /「AT WAR WITH REALITY」(2014)
category: デスメタル | author: 黒崎正刀
0
    At War With RealityAt War With Reality
    At The Gates

    Dope Entertainment 2014-10-26
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    ■COUNTRY: SWEDEN
    ■GENRE:MELODIC DEATH METAL

    ■TRACKLIST:
    01. El Altar Del Dios Desconocido
    02. Death and The Labyrinth
    03. At War With Reality
    04. The Circular Ruins
    05. Heroes and Tombs
    06. The Conspiracy Of The Blind
    07. Order From Chaos
    08. The Book Of Sand (The Abomination)
    09. The Head Of The Hydra
    10. City Of Mirrors
    11. Eater Of Gods
    12. Upon Pillars Of Dust
    13. The Night Eternal




    ■BIO:
    北欧デスメタルのフロンティアバンド、AT THE GATESは、スウェーデン、イエテボリにて1990年に結成される。
    以後4作のスタジオアルバムを製作するが、なかでも1995年にリリースされた「SLAUGHTER OF THE SOUL」でその名をとどろかせることになった。
    1996年に早くも解散してしまうが、2007年の再結成及び解散を経て、2010年に再々結成。ついに2014年に、5作目のフルアルバムに至るのであった。




    ■REVIEW:
    昭和ジャンプキッズの間には、「あのお方」という表現がある。

    ある、と言うほど有り触れたものでも実はなくて、
    そんな一部のオッサンジャーゴンを引っ張り出すのも忍びないのだが、少々解説にお付き合い頂きたい。
    漫画家車田正美、というと「聖闘士星矢」がその代表作だと思われがちだが、
    80年代の彼はといえば、紛れなく「リングにかけろ」で少年ジャンプ連載王座に君臨していた作者であり、
    その次の「風魔の小次郎」もまた話題作であった。
    要するに、アーリー80年代のジャンプキッズ(今より遙かに小学生全般に強大な影響力があった)は、皆車田ファンだった。
    で、そんな巨匠、車田正美の十八番、…というか良くも悪くものクセ、パターン、芸風が、
    この「あのお方」であったのだ。
    影がかった顔で髪型しか判らず、見開きでドーンと登場する、ボス格敵キャラ。
    ザコからイケメンの強敵までが、「ま、まさかあのお方が!?」とひざまづく。
    多くのキッズは、正体のわからないそのボスキャラに、
    「ええ!?こんな強いキャラまでが畏怖し、敬服するボスって、どんだけ強いの!?」
    と胸ときめくものの、一向にその姿が出てきやしない。
    しかもよくあるのが、
    やっと神秘のベールを脱いでみれば、「…あれ?」というパターン。
    (例:カオス皇帝)

    い、いやね、
    確かにそんな弱いわけじゃない。あっけないわけじゃないけどね。
    でも、こんだけ勿体ぶっといて、
    え、ちょっと、え?
    …こんな…もん…!?
    そういう経験則を踏まえた我々昭和ジャンプキッズは、
    時まだバブル期より早くから、期待値が実態を超えて格(資産価値)を膨らませていくという、バトルマンガ・バブル現象、
    「あのお方」を学んできたのであった。

    ここでポイントなのは、「あのお方」というのは、「よく判らないけどめっちゃ強そう!」というところだろう。
    決して弱くては、ならない。
    そう、それ相応に、確かに強いのだ。
    しかし、そのよく判らなさに高まらせられた結果、バブルが生じる。
    高まらせているものは、何か。
    権威、である。
    権威が、実態を上回る。
    それが「あのお方」を生じさせる。



    「ま、まさか北欧デスの始祖たる、あのお方が降臨したというのか!?」

    見開き、ドーン。
    この2014年に、やっと影がかっていた顔を見せた、あのお方こと、
    AT THE GATESが降臨するという。
    そう、
    嘗てメロデスの金字塔と呼ばれた「SLAUGHTER OF THE SOUL」。
    それを産み落とした、あのお方、である。

    考えてみれば、ぼくらは「あのお方」をよく知らない。
    リアルタイムで聴いてきたけど、正直、よく知らない。
    よく知らないけど、知らない間になんだか先のアルバムが神盤だとか何とか言われはじめて、
    慌ててチェックし直しを余儀なくされたバンド。
    まあ確かにいいアルバムには違いないけれど、
    早々に解散しちゃったのをいいことに、
    やがてそれが伝説から権威に変わっていったバンド。
    知っているようで、よく知らない、「あのお方」AT THE GATES。
    そう、
    ぼくらは、AT THE GATESをあの頃から、よく知らない。
    実のことを言えば、90年代北欧デス/ブラックメタル界隈には、割とそういうバンドが多いのだが、
    AT THE GATESほど「あのお方」しているバンドも、存外少ないだろう。

    そんな彼等の、19年ぶりの新作である、という。
    「あのお方」も随分と経ったものである。
    勿論、その間にTHE HAUNTEDがあり、
    ヴォーカルのおじさんはあちこちでソロもやり、来日し、
    でこのバンドの再結成なんかも何度かあったりして、
    それとなく実態も想像出来ているけれど、
    それでもやっぱりAT THE GATESはよく判らない。
    そんな「あのお方」の実態が、露わにされるという。
    今やアイドル曲にまで「デス声」がまざり、
    アニソンにもメロデス風味が用いられるこの時代に、である。
    さて如何に。



    ドラマティックなまでの叙情性、そして気品を讃えながらも、獣気放つ慟哭。
    ブルタリティやダイレクトな攻撃性を抑え気味に、前面に放たれるメロディックな哀愁。
    ダークがかった悲壮感。

    成る程、
    こりゃ確かにAT THE GATESであり、
    確かにイエテボリ流メロデス、である。
    以上。

    …え?
    それだけ?
    うん、それだけ。
    ただ、それだけ。
    そう、それ相応に、確かに素晴らしいけど、でも、こんなもん。
    決して悪くはないけれど、どちらかっちゃ地味というより、ぶっちゃけ、インパクトの肩すかし。
    うん、でもだからって何度も言うけど、全然悪くはない。
    でもそれがAT THE GATESだったのではないか。
    そうだったのか。
    そして、やっとぼくらは、AT THE GATESを、知ることが出来た。



    勿論、これでいいのだ。
    というより、
    よくもまあ、ここまで正しく「あのお方」らしいアルバムを作ってくれたものだと、
    感慨と敬意を抱かずにいられない。
    それだけで十分に、凄いと本当に思う。
    AT THE GATESは、やっぱり「あのお方」だった。
    それが判っただけで、どっか儲けモン、みたいな気すらしてくる。
    だからこそ。
    もし次があるというのなら、
    是非、また幻想を高めて欲しい。
    19年間知らずに待ってきたぼくらを、また高めてもらいたい。
    いいんだよ、「あのお方」で。
    「あのお方」、上等。
    だって、
    ロックなんて所詮は「あのお方」だらけなんだから。


    ■POINT:83(/100)


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    SLIPKNOT/「.5: The Gray Chapter」(2014)
    category: ヘヴィロック、ニューメタル、グルーヴメタル | author: 黒崎正刀
    0
      5: The Gray Chapter5: The Gray Chapter
      Slipknot

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      ■COUNTRY: USA
      ■GENRE:HEAVY ROCK,MIXTURE,NU-METAL

      ■TRACKLIST:
      01. XIX
      02. Sarcastrophe
      03. AOV
      04. The Devil In I
      05. Killpop
      06. Skeptic
      07. Lech
      08. Goodbye
      09. Nomadic
      10. The One That Kills The Least
      11. Custer
      12. Be Prepared For Hell
      13. The Negative One
      14. If Rain Is What You Wan
      t 15. Override
      16. The Burden
      17. Untitled
      18. Untitled
      19. Untitled




      ■BIO:
      1995年、アメリカ合衆国はアイオワ州デモインにて結成。
      1996年、自主製作アルバム「Mate. Feed. Kill. Repeat.」の後、2000年、1stアルバム「SLIPKNOT」にてメジャーデビュー。マスクを被った9人の個性と高い音楽性が注目され、更に2001年、「IOWA」にて一躍トップバンドに君臨する。
      しかし2010年、Paul Gray(b)が死去。
      本作はその後2014年に製作された、(自主製作アルバムを除いて)通算5作目のフルレングスアルバムだ。




      ■REVIEW:
      ほんと、気付けばもう、あれ!?てな感じで、
      うわ、マジで1ヶ月分あったっけ?とか、
      そんな気すらする位、知らない間に昨日、10月が終わっていた。

      てことは、もう今日からどうも11月らしい。
      11月か。
      早いなあ、もう2014年も押し迫ってきたんだなあ。
      そんな妙な感慨を抱きながら、秋の夜更けに化物たちの新作を聴いてみる。
      ハロウィン。
      ああ、そういや昨日はそうだった。
      そんな、一日遅れのハロウィン気分。
      ちょっとだけ遅れて、トリック・オア・トリート。
      SLIPKNOT。
      曰く、猟奇趣味的激烈音楽集団。
      あはは、チンケだなあ。
      こんな嘗ての通り名をふと頭に思い出して、なんだか苦笑する。
      2000年にデビューアルバムで世を席巻してから、
      そろそろ15年目にしてようやく5作目になる、フルアルバム。
      それを聴きながら正直に抱いたのは、
      ああ、ハロウィンって昨日だったけ、という、
      どこかそんな感慨に近いものであった。



      2010年、Paul Gray(b)急死。
      思えばあれから早く、4年も経つのか。
      メインコンポーザーをなくした彼等の損失たるや、尋常なものではなかっただろう。
      よくぞバンドを立て直し、ここまで辿り着いたものである。
      というか、よくよく考えてみたら本作は、彼の死去から初めてのアルバムでもある。
      遺産整理。
      数年経って感傷も随分と癒えた今になれば、そういう冷静な価値の見出しも、ここに出来なくもないだろう。
      しかも本作には、名ドラマーにしてソングライティングのもう片翼を背負っていたJoeyも不在だ。
      いやはや、お化け屋敷の長期経営ってのは、つくづく難しいものである。
      まずはこうやって、要のお化けたちをつなぎ止めるのが、難しい。
      しかもそんなお化け業界にだって、時流ってのがある。
      それを見据えながら、良質のサービスを続けるってのは、そうそう簡単なことではあるまい。

      と、そうした苦労をちょいと胸に置きつつ向かう本作は、
      昨今のメタル事情を踏まえつつ、
      ヘヴィロックの激しいピリ辛さと、メロディックな歌ものとしての甘みの塩梅を、
      程良く調合させているのが特徴だ。
      その実態を身も蓋もなく一言で表すならば、
      「初期プラスSTONE SOUR」、といったところか。
      そりゃプラスアルファ要素として、当然他にも語るところはちょいちょい散見されるだろう。
      元来の大所帯故な盛りすぎ体質と、あと「所詮は瞬間風速系色物」となめられたくない余りに施したバラエティと冗長化、アーティスティック面の強化などは、結果はさておきその筆頭といえよう。
      しかしそれらとて乱暴にざっくり伝えるなら、まあ概ね想定内に収まる範疇のものでしかない。
      尤も勝手な個人的見解と嗜好と分析の結果として言わせてもらうなら、
      それは戦法、戦略としても、恐らくは正解だ。
      激烈性と、ポップネス。
      ブルタリティと、キャッチーさ。
      ビートと、メロ。
      多様性と、絞り込み。
      それらがうまくマッチングしているのは、STONE SOURを含めた、自己の歩みを見つめ直しての賜に他なるまい。
      経験値が、成長が、成熟が、実直に生きている。
      “これまで”があったからこそ出来る、
      それでいて、”今”でしか出来ない。
      そうした彼等の姿も本作に至って見ることが出来るのは、やはり素直に評価したい。
      しかも、静性や内省性、メロウさやスロウネスなども備えておれど、
      過剰にダークでゴシックなお一人様暗黒世界の罠に入り浸ることなく、
      訴えられているのは、あくまで「動いてなんぼ」のSLIPKNOTブランド。
      そんな動性メイン、熱伝導の優れたパーカッシヴなヘヴィネス重視を軸に据えてのこの路線は、
      好評価こそされど、何ら揶揄されるものじゃないはずだ。
      加えて、このボリューム。
      是非はさてき、よくもまあ練りまわし、盛りに盛ったものであると感心の念すら覚えた。



      ただし、だ。
      いや、だからこそ、なのか。
      敢えて手厳しく言うならば、
      お化け屋敷のスケールダウン。
      サービスの、縮小再生産。
      つまりは、新装開店の今更感。
      悲しいかな、同時にそれもまたどうにも否めないのが、
      今の彼等の、お化け屋敷経営の実情であり、
      それを語るかのような本作の、最も痛いところだ。
      だからなのか、つい思ってしまう。
      ああ、SLIPKNOT、やっていたんだと。
      ああ、このお化け屋敷、まだやってたんだと。
      そういう、
      今のSLIPKNOTやっべー!みたいなのとはちと違った、
      ああ、そういや昨日ハロウィンだったね、みたいな感覚。感慨。
      まるで終わった「お化けごっこ」を、
      ああ、あったねー、やってたんだーみたいな、
      オワコンとまでは決して言わないが、
      何処かそんな遠目で見るような心象。
      これは一体なんだろう。
      確かに、少なくとも本作は、前作より遙かに良作である。
      というのに語弊があるなら、個人的に、好きな彼等の姿ではある。
      だが、それとこれとは違うレベルで、
      本作のSLIPKNOTに覚える情動が、そんなところなのもまた事実だから厄介だ。



      勿論、そうなのだ。
      ベテランになる、ベテランとして生きる、ベテランを歩む、ということには、
      ある意味において、そういう面だって、少なからずあるものだ。
      だからそれは、それ自体は、決してさほどネガティヴなものではないのだろう。
      恐らくは、本作における質の問題、作品自体のインパクトの問題と、彼等の環境の問題。
      それらが幾層かに、密接に重なって引き起こしているせいなのかもしれない。
      よってそれらはおいそれと、簡単に要因として引きはがせるものでもないに違いない。
      だからその処方箋は何かと問われたら、
      それはもっと、「やって」やるしかない。
      ああ、やっていたんだ、いや、やっているんだと、
      お化け屋敷の観客にとくと、これでもかと思わせてやるしか、多分、ない。
      テメエで自ら言ってて、煽っておいてなんだが、
      でも解決法はまずそれしか見あたらない。



      時間は流れる。
      今日も、やがては昨日になる。
      そうやって15年だって、やがては流れる。
      でもそうやって、その中でもがき、新装開店を迎え続けるしかない。
      そう、
      ハロウィンだって、また来年必ず来るのである。


      ■POINT:80(/100)


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